第2回 軌道解析結果(はやぶさカプセル)[python]
今回は、前回紹介した解析条件[1]をもとに行ったはやぶさカプセルの再突入軌道解析の結果についてみていきたいと思います。(基本的に時間4次精度の結果になります.)
前回はこちら。
コードはGithubにあげています.
1飛行軌道
まずは,イメージがつかみやすいように地球と軌道の軌跡を記載します.
(x, yのサイズは同じ出ない事に注意してください.)
地球の直径に対し,大気がいかに薄いかわかります.高度30km辺りで角度方向の速度がほぼ0になり,その後まっすぐ重力に引かれ落ちているいます.
次に高度,速度,衝撃値Gの時間履歴です.
高度200kmから解析を実施していますが,はじめの約50秒は速度が落ちていません.これは高高度において空気の密度が薄く,空気抵抗が働いていないためです.
その後,空気抵抗が効きはじめ,速度が一気に落ちるとともにとても大きい50G以上がかかっています.人が乗っていないのでこのような無茶もできるわけですね.
100秒以降では,空気抵抗とつり合い,一定の1Gに落ち着いています.
横軸高度,縦軸速度の関係はこのようになっています.時間刻み幅が十分小さいので1次精度も4次精度も差がありません.
また,マッハ数、レイノルズ数についても見てみます。
音速: $$ a = \sqrt{kRT}$$
マッハ数: $$ Ma = \frac{u}{a}$$
レイノルズ数:$$ Re = \frac{\rho U L}{\mu}$$
ぱっと見奇妙な結果に見えますね.
はじめは,空気の密度が薄いため,レイノルズ数がとても小さくなっています.マッハ数は速度と温度の関数であり,空気の温度が上がるにつれ大きくなっています.
その後,速度が落ちるためマッハ数は小さくなっていきます.レイノルズ数は速度の影響よりも動粘性係数の影響を受け,上昇していきます.
2 熱流束
再突入時に高温気体にさらされますが、どの程度の熱流束なのか評価します。温度の定義が難しい事もあり,熱流束でよく評価されます。
ここでは、対流[2]と輻射[3]によってどの程度の熱が入るか図にします。
強くGを受ける領域で温度が上がっていることがわかります.衝撃波が生じ,気体が圧縮され温度が上がっているはずです.主に対流の影響であり,1/5程度が輻射ですね.
速度が落ちてからは,0になっています.
また,熱流束の値は参考論文と良く一致しており,解析コードは正常に動いていることが確認できます.
3 まとめ
以上でカプセルがどのような環境で地球に戻ってくるか確認できました.
大気モデルを変更する事で,火星や金星大気への突入時の環境を計算することが出来ます.
4次精度のコードには,熱流束等の計算も入っているので,地球の場合は色んな解析を簡単に実施出来るかと思います.
例えば,突入する際の角度(経路角)が浅い場合は,どうなるでしょうか.
\(\gamma = -8.7 \)deg の場合は一度はねた後に,重力に引っ張られ落下しています.
\(\gamma = -8.0\)deg の場合は一度はねた後に,重力で捕まえきれずどこかへ行ってしまいます.
数度というとてもシビアな条件なんですね.
このような遊びが出来るので色々な条件で試してみてください.(重さは同じだが面積は大きい,面積と質量の比は同じでそれぞれが違う2種類のカプセルなどなど)
ここまで読んで下さり,ありがとうございます。
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参考文献:
[1] Takahashi, Yusuke, and Kazuhiko Yamada, “Aerodynamic-heating analysis of sample-return capsule in future Trojan-asteroid exploration,” Journal of thermophysics and heat transfer 32.3 (2018): 547-559.
[2] N.H. KEMP, F.R. RIDDELL, “Heat Transfer to Satellite Vehicles Re-entering the Atmosphere”, Journal of Jet Propulsion. 27 (1957) 132–137. doi:10.2514/8.12603.
[3] Tauber, Michael E., and Kenneth Sutton, “Stagnation-point radiative heating relations for Earth and Mars entries”, Journal of Spacecraft and Rockets 28.1 (1991): 40-42.
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