工学系大学院生のブログ

2人の大学院生による雑記ブログ

第5-1回 オイラー方程式[python]

$$\frac{\partial Q}{\partial t}+ \frac{\partial F}{\partial x} =0$$

$$Q=\left\{ \begin{array}{c} \rho \\ \rho u \\ e \end{array}\right\} , F=\left\{ \begin{array}{c} \rho u \\ p+\rho u^2 \\ (e+p)u \end{array}\right\} $$


第5回では圧縮性流体の代表である衝撃波管(Sod shock tube)を解きたいと思います.

この Sod shock tube は厳密解が求められており,数値解との比較ができるため圧縮性流体コードの妥当性検証が行えます.


第5-1回では圧縮性流体を解くための支配方程式であるオイラー方程式とは何かというお話をします.第5回を通して一次元で考えます.


冒頭に書きましたオイラー方程式は「質量保存則」「運動量保存則」「エネルギー保存則」の3つの式から成り立っています.



・質量保存則

検査体積において出入りした質量分が,検査体積の密度の時間変化になるので,
単位体積当たりの質量すなわち密度\(\rho\)と単位体積当たりの質量流量\(\rho u\)から,次のように書くことができます.

$$\frac{\partial}{\partial t} \int \rho dx+ \int \rho u dx=0 $$

ガウスの発散定理より,

$$\int(\frac{\partial \rho}{\partial t} + \frac{\partial }{\partial x}(\rho u) )dx=0 $$

このdxを小さくしていくと,x方向に対する変化が無くなり,dxの範囲で全ての項が一定とみなせます.すなわち次の微分形の式が得られます.

$$\frac{\partial \rho}{\partial t} + \frac{\partial }{\partial x}(\rho u) =0 $$



・運動量保存則

質量保存則と同じように考えます.

ただし,運動量流量だけでなく,圧力差によっても流れが誘起されるため,次のようになります.

$$\frac{\partial}{\partial t} \int \rho u dx+ \int \rho u^2 dx=0 $$

$$⇔\frac{\partial }{\partial t}(\rho u) + \frac{\partial }{\partial x}(p+\rho u^2) =0 $$



・エネルギー保存則

単位体積当たりのエネルギー\(e\)を用います.エネルギーの変化はエネルギー流束\(eu\)と圧力による仕事によって起こるので,

$$\frac{\partial}{\partial t} \int e dx+ \int (e+p) u dx=0 $$

$$⇔\frac{\partial e}{\partial t} + \frac{\partial }{\partial x}((e+p)u) =0 $$

また,\((e+p)=h\)であり,これは単位体積当たりの全エンタルピー\(h\)です.

さらに単位質量あたりの全エンタルピー\(H\)は次の関係にあります.

$$H=\frac{h}{\rho}$$



以上,これら三つの式をまとめて冒頭のように保存形で書くことができます.


下記では今後必要となる値,式などを羅列しておきます.


比熱比:\(\gamma\)


流束ヤコビアン行列:\(A=\frac{\partial F}{\partial Q}\)

$$A= \left[ \begin{array}{ccc} \frac{\partial F_1}{\partial Q_1 } & \frac{\partial F_1}{\partial Q_2} & \frac{\partial F_1}{\partial Q_3} \\ \frac{\partial F_2}{\partial Q_1} & \frac{\partial F_2}{\partial Q_2} & \frac{\partial F_2}{\partial Q_3} \\ \frac{\partial F_3}{\partial Q_1} & \frac{\partial F_3}{\partial Q_2} & \frac{\partial F_3}{\partial Q_3} \end{array}\right] $$

$$= \left[ \begin{array}{ccc} 0&1&0 \\ -\frac{3-\gamma}{2}u^2&(3-\gamma)u&\gamma-1 \\ (\frac{\gamma-1}{2}u^2-H)u&H-(\gamma-1)u^2&\gamma u \end{array}\right] $$


基本量:\(q= \left( \begin{array}{c} \rho \\ u \\ p \end{array}\right) \)



次回は圧縮性流体特有の衝撃波に対するフラックスの取り方(FVS)を行います.

by hide

*コードは第5-3回に書いてあります。

このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です